はじめての年度更新でも安心!労働保険料の計算方法と申告の進め方(2026/4/24)

労働保険の年度更新は、毎年行う重要な労務手続きです。はじめて担当する方にとっては、「どの賃金を集計するのか」「確定保険料と概算保険料の違いは何か」「いつまでに申告・納付すればよいのか」など、不安に感じる点が多いのではないでしょうか。
この記事では、労働保険料の計算方法、年度更新の流れ、申告書の書き方、電子申請・納付方法、よくあるミスまで、実務担当者向けにわかりやすく解説します。令和8年度の年度更新期間は、令和8年6月1日(月)から7月10日(金)までです。期限直前に慌てないよう、早めに準備を進めましょう。
年度更新とは?労働保険年度更新の基本と手続きの全体像をわかりやすい解説
労働保険年度更新とは何か?年度ごとの申告・納付が必要な理由
労働保険の年度更新とは、前年度に実際に支払った賃金総額をもとに「確定保険料」を計算し、あわせて新年度に支払う予定の賃金総額をもとに「概算保険料」を申告・納付する手続きです。
労働保険料は、年度の初めに見込み額で概算納付し、年度終了後に実際の賃金額で精算する仕組みです。そのため、毎年1回、前年度分の精算と新年度分の見込み納付を行う必要があります。
対象となる労働保険・雇用保険・労災保険の違いと事業ごとの考え方
労働保険とは、労災保険と雇用保険をまとめた総称です。労災保険は、業務中や通勤中のけが・病気などに備える制度で、原則として労働者を1人でも雇用していれば対象となります。雇用保険は、失業給付や育児休業給付などに関係する制度で、一定の条件を満たす労働者が加入します。
年度更新では、労災保険料、雇用保険料、一般拠出金をそれぞれ確認し、事業の種類や労働者の区分に応じて正しく計算することが大切です。建設業など一括有期事業に該当する場合は、通常の継続事業とは集計方法が異なるため注意しましょう。
年度更新はいつ行う?今年度・新年度の実施時期と納付期限
労働保険の年度更新は、原則として毎年6月1日から7月10日までに行います。令和8年度の年度更新期間は、令和8年6月1日(月)から7月10日(金)までです。
この期間内に、申告書の提出と保険料の納付を済ませる必要があります。期限を過ぎると、督促や追徴金などのリスクが生じることがあるため、余裕をもって準備しましょう。
はじめてでも迷わない!年度更新の流れと事前準備のステップ
申告までの流れを確認:前年度の確定から今年度の概算までの手順
年度更新は、次の流れで進めるとスムーズです。
- 前年度の賃金台帳・給与データを確認する
- 労災保険・雇用保険の対象となる賃金を集計する
- 前年度の確定保険料を計算する
- 新年度の概算保険料を計算する
- 申告書に金額を記入・確認する
- 労働局・労働基準監督署・金融機関・電子申請などで提出する
- 保険料を納付する
特に重要なのは、賃金総額の集計です。ここで漏れや誤りがあると、申告書全体の金額がずれてしまいます。
必要書類・資料・同封の封筒をチェックして提出前の準備を進める
年度更新の時期になると、労働局から申告書や納付書、案内資料などが送付されます。ただし、電子申請が義務付けられている一部の事業場では、令和8年度から紙の申告書が送付されず、電子申請に必要な情報を記載した通知書等が送付されます。
手元に届いた書類は、労働保険番号、事業の種類、料率、納付書の有無、提出先を確認しましょう。封筒を開封せずに放置してしまうと、準備が遅れる原因になります。
人事・労務・給与計算担当者が事前に集計しておくべき賃金データ
年度更新では、前年度中に支払いが確定した賃金を集計します。給与、賞与、各種手当、残業代、通勤手当など、労働の対償として支払われるものは原則として賃金に含まれます。
一方で、役員報酬、実費弁償的な出張旅費、慶弔見舞金など、労働保険料の算定対象外となるものもあります。給与計算ソフトのデータをそのまま使う場合でも、対象・対象外の区分を必ず確認しましょう。
労働保険料の計算方法を理解しよう:確定保険料と概算保険料の算出ルール
労働保険料の計算方法の基本:基礎賃金・賃金総額・手当の考え方
労働保険料は、原則として次の計算式で算出します。
労働保険料 = 賃金総額 × 保険料率
賃金総額には、基本給だけでなく、残業手当、役職手当、通勤手当、賞与なども含めます。名称にかかわらず、労働の対償として支払われるものは対象になると考えるのが基本です。
年度更新でいう「基礎賃金」とは、保険料を計算するためのもとになる賃金です。給与計算上の支給総額と一致するとは限らないため、対象外の支給項目を除外しながら集計します。
前年度の確定保険料と今年度の概算保険料を計算する方法
前年度の確定保険料は、前年度に実際に支払った賃金総額をもとに計算します。新年度の概算保険料は、新年度に支払う予定の賃金総額をもとに計算します。
通常、今年度の賃金見込額が前年度と大きく変わらない場合は、前年度の賃金総額をもとに概算保険料を計算します。一方で、従業員数の大幅な増減、事業規模の変化、賞与支給方針の変更などがある場合は、実態に合わせた見込額で計算する必要があります。
労災保険料・雇用保険料・一般拠出金の算定と料率の見方
労災保険料は、事業の種類ごとに定められた労災保険率を用いて計算します。雇用保険料は、雇用保険の被保険者に支払った賃金をもとに、雇用保険料率を掛けて計算します。
令和8年4月1日からは雇用保険料率が改定されます。年度更新では、前年度の確定保険料と新年度の概算保険料で適用する料率が異なる場合があるため、必ず最新の料率表を確認しましょう。
また、石綿健康被害救済法に基づく一般拠出金も、年度更新の際に労働保険料とあわせて申告・納付します。一般拠出金は、労災保険の対象となる賃金総額をもとに計算します。
ケース別に確認!翌月払い・年間途中の入退社がある場合の計算と対応
翌月払いの給与を年度更新に反映する期間の考え方
年度更新では、「いつ働いた分か」ではなく、「賃金の支払いが確定した日」を基準に集計します。たとえば、3月勤務分を4月に支払う翌月払いの会社では、その給与がどの年度の賃金に含まれるかを確認する必要があります。
給与締日、支払日、賃金台帳の記載ルールを整理し、毎年同じ基準で集計することが重要です。担当者が変わった場合でも同じ処理ができるよう、社内で年度更新用の集計ルールを残しておくと安心です。
従業員の入社・退職・賞与支給があった場合の集計と計算の注意点
年度途中に入社した従業員については、入社後に支払いが確定した賃金を集計します。退職者についても、年度内に支払いが確定した給与や賞与、退職月の賃金などがあれば集計対象となります。
賞与は漏れやすい項目です。夏季賞与、冬季賞与、決算賞与、臨時手当など、給与とは別に支払ったものも確認しましょう。退職者への最終給与や賞与が年度をまたぐ場合も注意が必要です。
社会保険との違いを押さえてミスを防ぐポイント
労働保険と社会保険では、対象者や保険料の計算方法が異なります。社会保険は標準報酬月額をもとに計算しますが、労働保険は原則として実際の賃金総額をもとに計算します。
また、役員、短時間労働者、アルバイト、兼務役員などは、労災保険・雇用保険・社会保険で取り扱いが異なることがあります。「社会保険に加入していないから労働保険も対象外」と判断するのは危険です。
申告書の書き方と集計表の作成方法
申告書の記入・書き方の基本と転記ミスを防ぐコツ
申告書には、前年度の確定保険料、新年度の概算保険料、一般拠出金、充当額、不足額、納付額などを記入します。手書きで作成する場合は、桁ずれや転記ミスに注意しましょう。
ミスを防ぐには、先に賃金集計表を作成し、労災保険対象賃金、雇用保険対象賃金、雇用保険被保険者分を分けて確認することが有効です。申告書へ直接書き始めるより、下書きや計算表を作成してから転記する方が安全です。
集計表を作成するときの手順と基礎賃金の集計方法
集計表を作成するときは、月ごと・従業員ごとに賃金を整理します。給与と賞与を分け、労災保険対象、雇用保険対象、対象外賃金を区別して集計しましょう。
特に、雇用保険の被保険者ではない短時間労働者や役員兼務者がいる場合は、労災保険の対象賃金と雇用保険の対象賃金が一致しないことがあります。集計表の段階で区分しておくと、申告書作成時の混乱を防げます。
申告書の訂正が必要になったときの対応方法と注意
申告後に賃金集計の誤りや記入ミスに気づいた場合は、早めに管轄の労働局または労働基準監督署へ相談しましょう。誤りの内容によって、訂正申告や追加納付が必要になることがあります。
不足が発生している場合は、追加納付だけでなく追徴金が発生する可能性もあります。ミスに気づいたら放置せず、早めに対応することが大切です。
提出・納付はどう進める?電子申請・e-Gov・書面提出のやり方
提出先はどこ?労働局・労働基準監督署・金融機関への提出方法
年度更新申告書は、管轄の都道府県労働局、労働基準監督署への郵送または窓口提出、電子申請などで提出できます。金融機関で納付する場合は、納付書と申告書をあわせて取り扱うケースもあります。
提出方法によって必要な書類や控えの扱いが異なるため、同封の案内や管轄労働局の情報を確認しましょう。期限直前は窓口や問い合わせ先が混み合いやすいため、早めの提出がおすすめです。
電子申請とe-Govを使った申請手続きの流れとメリット
労働保険の年度更新は、e-Govを利用した電子申請にも対応しています。電子申請を使うと、窓口に出向かずに申告でき、時間や場所にとらわれず手続きを進められます。
また、GビズIDを利用することで、一定の労働保険関係手続きについて電子証明書を添付せずに手続きできる場合があります。電子申請が義務付けられている法人は、令和8年度から紙の申告書が送付されないため、通知書に記載された情報を確認し、電子申請で対応しましょう。
口座振替・納付書・電子納付など納付方法と支払時期の違い
労働保険料の納付方法には、納付書による金融機関での納付、電子納付、口座振替などがあります。口座振替を利用すると、通常の納期限よりも引き落とし日が後になるため、資金繰りに余裕を持ちやすいというメリットがあります。
ただし、口座振替を利用するには事前の申請が必要です。年度更新の時期になってから慌てて申し込んでも、当年度の第1期に間に合わない場合があります。翌年度以降の効率化を考える場合は、早めに手続きを検討しましょう。
労働保険料の支払時期と分割納付を確認しよう
労働保険料の納付はいつまで?令和・8年度労働保険年度更新の時期に注意
令和8年度の年度更新では、申告・納付期限は令和8年7月10日(金)です。全期分を一括で納付する場合は、この期限までに納付します。
口座振替を利用している場合は、通常の納期限とは引き落とし日が異なります。令和8年度は、第1期または全期の口座振替日が令和8年9月7日(月)とされています。納付方法によって支払時期が変わるため、自社の納付方法を確認しておきましょう。
一括納付と3回の分割納付(延納)の条件と納付期限
一定の条件を満たす場合、労働保険料は3回に分けて納付できます。これを延納といいます。令和8年度の通常の納期限は、第1期が令和8年7月10日(金)、第2期が令和8年11月2日(月)、第3期が令和9年2月1日(月)です。
口座振替の場合は、第1期が令和8年9月7日(月)、第2期が令和8年11月16日(月)、第3期が令和9年2月15日(月)です。労働保険事務組合に委託している場合は、事務組合が指定する期限に従います。
納付が遅れた場合のリスクと事務処理で注意すべき点
納付が遅れると、督促や延滞金、場合によっては追徴金の対象となることがあります。特に、賃金集計の誤りにより保険料が不足していた場合、不足分の追加納付が必要になることがあります。
年度更新は「提出すれば終わり」ではありません。申告内容、納付額、納付日、控えの保管まで確認し、後から問い合わせがあっても説明できるようにしておきましょう。
効率化したい人向け:労働保険年度更新計算ツール・無料ソフト・システム活用法
労働保険年度更新計算ツールを使うメリットと確認すべき機能
年度更新の計算は、厚生労働省の年度更新申告書計算支援ツールや給与計算ソフトを活用すると効率化できます。手計算に比べて、料率の掛け間違いや集計漏れを防ぎやすくなります。
ツールを選ぶ際は、最新の雇用保険料率・労災保険率に対応しているか、労災保険対象賃金と雇用保険対象賃金を分けて集計できるか、申告書への転記がしやすいかを確認しましょう。
無料ツール・ソフト・勤怠管理システムで業務を効率化する方法
無料の計算支援ツールや給与計算ソフトを使う場合でも、元データの正確性が重要です。勤怠管理システム、給与計算システム、賞与データ、退職者データがバラバラに管理されていると、集計漏れが起こりやすくなります。
年度更新前に、給与データをCSVで出力できるか、退職者を含めた年間賃金を確認できるか、賞与データが別管理になっていないかを確認しておきましょう。
電子対応を進めるための導入ポイントと労務管理の実務
電子申請やクラウド型の労務管理システムを導入すると、年度更新だけでなく、雇用保険手続き、社会保険手続き、入退社手続きなども効率化できます。
ただし、システムを導入しても、設定や運用ルールが誤っていれば正しい申告はできません。導入時には、賃金項目の設定、雇用保険対象者の判定、退職者データの保管方法などを確認しましょう。
はじめての年度更新でよくあるミスと注意点
賃金算出の漏れ・対象外項目の誤りなど計算ミスの防ぎ方
年度更新で多いミスは、賞与の集計漏れ、退職者の賃金漏れ、通勤手当の除外誤り、雇用保険対象者の判定ミスです。特に、給与ソフトから出力したデータだけを確認していると、別管理の賞与や手当を見落とすことがあります。
ミスを防ぐには、賃金台帳、給与明細、賞与台帳、退職者リスト、雇用保険資格取得・喪失の記録を照合することが大切です。チェックリストを作成し、毎年同じ手順で確認しましょう。
提出期限・納付期限・書類不備で起こりやすいトラブル
年度更新は期限が明確に決まっているため、提出遅れや納付遅れが大きなトラブルにつながります。申告書の押印・記入漏れ、労働保険番号の誤り、納付書の金額相違、電子申請の送信漏れにも注意が必要です。
電子申請の場合も、データを作成しただけでは手続き完了ではありません。送信完了、到達確認、納付手続きまで確認しましょう。
年度更新に不安がある場合は綾部事務所へご相談ください
労働保険の年度更新は、賃金集計や料率確認、申告書作成、納付手続きまで確認事項が多く、はじめて担当する方にとって負担の大きい業務です。特に、従業員の入退社が多い場合、パート・アルバイト・役員兼務者がいる場合、賞与や各種手当の扱いに迷う場合は、自己判断で進めると計算ミスにつながることがあります。
綾部事務所では、労働保険年度更新の申告手続き、賃金集計の確認、労働保険料の計算、電子申請への対応まで、事業所様の状況に合わせてサポートいたします。
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