若手社員の退職理由は「転勤」だった?-働き方の価値観が変わる今、中小企業が見直すべき制度とは(2025/12/12)
「転勤の辞令を出したら、社員が辞めてしまった…」
そんな出来事が、実際に全国で起きています。
2025年8月4日にYahoo! JAPANニュース(朝日新聞)で報じられた調査記事によると、20代・30代の若手社員の6割以上が、「転勤辞令が出たら退職を検討する」と回答したことがわかりました。
この調査は、人材サービスのエン・ジャパン株式会社が、自社サービス「エン転職」ユーザー2303人に対して実施したもの。
「転勤」というキーワードが、もはや“キャリアアップ”ではなく“離職理由”になりつつある現実が浮かび上がったのです。
「転勤=成長」は、もう通用しない
かつては、転勤を通じてキャリアを積むことが“当然の通過点”とされてきました。
しかし今はどうでしょうか?
同調査では「転勤のメリット」について「出世・昇給につながった」と答えた人は、20代でゼロ%、30代でもわずか10%にとどまりました。
一方、「転勤がきっかけで退職を考えた」と回答した20代は69%にも上っています。
特に20〜30代は、転勤に対して強い抵抗感を示しています。
若手社員の価値観は、すでに以下のようにシフトしています。
- リモートで働ける時代に「物理的な異動」は不要
- 家庭やライフスタイルの安定を優先したい
- 地元や特定エリアで腰を据えて働きたい
- 転勤によるキャリアアップより、転職で条件を上げる方が効率的
つまり、これまでの“全国転勤ありき”の制度は、若手にとっては「会社に残らない理由」にすらなりうるのです。
退職に至ったリアルな声
記事には、実際に転勤を理由に退職した人の声も紹介されていました。
- 「転勤先の待遇が説明と違い、不利益を被った」(30代男性)
- 「転勤先の街を気に入り、定住のため退職した」(30代女性)
- 「転勤を断ったら、待遇が悪くなった」(40代女性)
- 「転勤を受け入れると、“いつでも異動OKな人”として軽く扱われた」(40代女性)
これらはすべて、制度の運用や説明、社内の意識が“昔のまま”であることが原因です。
中小企業こそ、今すぐ制度を見直すべき理由
「うちは転勤なんてめったにないから関係ない」と思っていませんか?
むしろ地方の中小企業こそ、採用と定着が困難な時代だからこそ、以下のような制度的見直しが求められています。
1. 転勤制度の見直しと明文化
- 「転勤あり」「転勤なし」を職種や役割で明確に分ける
- 転勤の頻度、範囲、条件を就業規則や雇用契約に明記
- 本人との事前同意を必須とする運用の徹底
特に採用活動では、「全国転勤あり」と求人票に記載されているだけで、応募率は大きく下がります。
逆に「転勤なし・地域限定職あり」などと書くと、地元で長く働きたい優秀層が集まりやすくなります。
2. 出世・昇給のルートを再設計する
「転勤した人が出世する」という仕組みは、若手社員にとっては敬遠される要因になります。
その代わりに以下のような基準を設けると、評価の納得感が高まります。
- 業務成果・プロセス評価を基軸にした昇格ルート
- リーダー育成のための教育制度の充実
- キャリア面談を定期的に行い、本人の意思を尊重
3. ライフスタイルを尊重した働き方への移行
- 介護・子育て中の社員には通勤時間の制限を設ける
- リモートワークの導入やフレックス制度を活用
- 異動を伴わない“チーム再編”で人材の活用を最適化
特に最近では「企業型DC(確定拠出年金)」や「リスキリング支援」など、長期的に働ける環境整備が選ばれる会社づくりのカギとなっています。
経営者がすべき“たった一つの質問”
最後に、中小企業の経営者の方にこそ考えていただきたい問いがあります。
「もし自分が20代社員だったら、この会社で10年働きたいと思えるか?」
転勤制度に限らず、評価制度、働き方、給与設計、将来の展望…。
どこかに“若手が辞めたくなる理由”が残っていないでしょうか?
働く環境を整えることは、今やコストではなく「投資」です。
採用難が続く今こそ、制度設計を見直し、長く活躍してくれる人材を増やしていくチャンスなのです。
まとめ|採用・定着でお困りの方は綾部事務所まで
「転勤辞令を出しただけで辞められたら困る」
そう思う経営者の方は少なくないはずです。
ですが、それは社員のわがままではなく、会社側の制度が“今の時代に合っていない”というシグナルかもしれません。
綾部事務所では、中小企業向けに以下のような支援を行っています:
- 転勤制度や就業規則の見直し支援
- 若手が納得して働ける人事評価制度の設計
- 採用戦略・定着率向上のコンサルティング
- 企業型DCの導入による長期雇用施策のご提案
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