「退職給付金がもらえる?」情報にご注意を(2026/4/28)
~事業主として押さえておきたいリスクと正しい理解~
こんにちは、社会保険労務士の綾部です。
最近、「退職すると数百万円もらえる」「知らないと損する給付金」といった広告や情報を目にする機会が増えています。
従業員から
「これって使えますか?」
と相談を受けたことがある事業主の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回は、こうした情報について、事業主として押さえておくべきポイントとリスクを整理します。
■ 「退職給付金」という制度は一つではない
まず大前提として、
👉 「退職給付金」という統一された公的制度は存在しません
一般的には、以下のような制度をまとめて表現しているケースが多いです。
● 雇用保険の基本手当(いわゆる失業保険)
https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_basicbenefit.html
● 健康保険の傷病手当金
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat310/sb3040/r139/
これらはいずれも公的制度ですが、
👉 受給には厳密な要件がある制度です。
■ すべての人が対象になるわけではない
ここが最も重要なポイントです。
例えば、
雇用保険の基本手当
- ・一定期間の加入実績が必要
- ・働く意思と能力があること
- ・求職活動をしていること
傷病手当金
- ・業務外の病気・ケガ
- ・働けない状態であること
- ・会社から給与が支払われていないこと
など、細かい条件を満たす必要があります。
👉 「退職すれば誰でももらえる」というものではありません。
■ 注意すべき「誤解を招く表現」
最近の情報で特に注意したいのが、
- ・「条件に当てはまれば数百万円」
- ・「今なら対象」
- ・「診断すれば受給可能」
といった表現です。
これらは、
👉 一部の条件に該当するケースを強調している可能性
があります。
特に、
👉 「こうすればもらえる」「こう言えば対象になる」
といったニュアンスの情報は非常に危険です。
■ 事実と異なる内容での申請はペナルティのリスク
ここは事業主として特に注意が必要です。
例えば、
- ・実際は働ける状態なのに「働けない」と申請
- ・退職理由を実態と異なる形で申告
- ・就労意思がないのに求職活動を装う
こうした行為は、
👉 不正受給と判断される可能性があります
不正受給が認定された場合は、
- ・支給額の返還
- ・最大で3倍返し(納付命令)
- ・悪質な場合は刑事罰
といったペナルティの対象になります。
■ 会社側にもリスクがある
従業員の不正に会社が関与した場合や、
- ・事実と異なる離職理由の記載
- ・虚偽の証明
- ・不適切なアドバイス
などがあった場合、
👉 会社側も調査対象となる可能性があります。
また、
👉 「あの会社は不正を助長する」
といった風評リスクにもつながりかねません。
■ 制度の活用自体を否定するものではありません
ここは誤解のないようにお伝えします。
👉 正しく要件を満たす場合には、制度の活用は有効です。
- ・本当に働けない状態での傷病手当金
- ・正当な失業状態での基本手当
これらは、生活を支える大切な制度です。
■ 事業主としての対応ポイント
こうした相談を受けた場合は、以下の対応が重要です。
① 制度の正確な情報を伝える
「条件があります」「個別判断になります」と伝える
② 断定的なアドバイスはしない
「必ずもらえる」はNG
③ 必要に応じて専門家につなぐ
社労士やハローワーク等へ
④ 会社として不正に関与しない
ここは明確な線引きが必要です
■ まとめ
最近話題の「退職給付金」に関する情報は、
✔ 制度自体は存在する
✔ ただし対象は限定される
✔ 誤解を招く表現も多い
という点を理解する必要があります。
最後にひとこと。
👉 「もらえるかどうか」より「正しく使えるかどうか」
これが一番重要です。
当事務所では、
✔ 雇用保険・健康保険の正しい運用
✔ 退職時の手続きアドバイス
✔ トラブル防止のための体制整備
などもサポートしています。
気になる情報があれば、自己判断せずご相談ください。
